十七歳


十七歳』  小林紀晴 著

 小林紀晴さんの書く文章が昔から好きで、もちろん写真家としての写真も素晴らしい(本書の表紙写真も切なくなるほど美しい)のだけれど、透明感があって素朴ででも力強い文章はいつも映像と感情を同時に喚起させるし、臓腑に響くような余韻がいつまでも続く。もともと「遅れてきたバックパッカー」として『アジアン・ジャパニーズ』を読みふけった僕は(僕らの世代の『深夜特急』なのだ)、いつしかその紡がれる文章に引きつけられていったのだ。
 本書『十七歳』でもその筆致は変わらない。本書は小説作品だけれど、作品の位置づけとしては、『写真学生』へと続く故郷諏訪での高校生活の最後の1年が綴られている。紀晴さんは前作『父の感触』において9.11を体験したNYから故郷諏訪への象徴的な「帰還」を描いたが、先頃刊行された写真集『はなはねに』とあわせて、こうした故郷への眼差しの先に、今回のテーマが結実したのだと言える。故郷諏訪と、写真との出会いという接点が描かれていて、紀晴さんのひとつの原風景と言えるかもしれない。
 また本書は著者初の恋愛小説となっている。もちろん、退屈な田舎のパッとしない高校生である主人公にとって、現代の基準で言うような恋愛はほとんど何も起こっていないと言っていい。それでも、20年後のNYでいまだに主人公が抱き続けるその人からの想いを考えたとき、誰にとっても17歳というその1年間と、そこで出会った大切な人びとが、その後の人生をいかに規定しうるかに思いを馳せずにいられない。
 自分は何者になれるのかと焦燥し、東京への憧憬を抱き、そして故郷を離れることで永遠に失ってしまう人たちを前にした青年の成長譚を描いた本書は、たとえば東京育ちの僕にとっては環境も世代もまったく違う世界のものだと言えるかもしれない。それでもそこに描かれている17歳という瞬間が、誰もが象徴的に通過してきた時間だからこそ、懐かしさの中にほろ苦い悲しみと憧憬を読み手に抱かせるのだ。

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