カート・ヴォネガット死去

 カート・ヴォネガットが死んだ。20世紀アメリカを代表する作家のひとり。60年代、ペーパーバックで刊行された彼の作品は、当時の学生たちのカルト的人気を得て、アメリカのカウンターカルチャーを下支えした。それ以上に、20世紀の作家として最も教科書への登場回数が多い人物、と言われるほど、彼はアメリカのイコンとなっていた。アメリカだけではない。日本では浅倉久志さんの訳で有名だけれども、村上春樹氏がヴォネガットの影響を受けたことを公言しているし、柴田元幸氏はたしか卒論がヴォネガットだったと読んだことがある。池澤夏樹氏は『母なる夜』を翻訳しているし、今、手元にある『吾が魂のイロニー〜カート・ヴォネガットJr.の研究読本』(1984年刊!)には、村上氏や池澤氏のほかにも高橋源一郎氏や橋本治氏など、そうそうたるメンツが並んでいて面白い。つまりは、みんなヴォネガットを通過してきたのだ。
 そして70年代生まれの僕は、村上春樹を通してヴォネガットと出会った。これもまた世代の典型例なのだと思う。そしてSFともユーモアともとれる彼の作品は、不思議と芯の部分で若者の閉塞感や矛盾や希望を代弁してくれていた。有名な彼のフレーズ「so it goes…(そういうものだ)」は、そんな若者特有の時代へのレジスタンスだったと思うし、肩肘張らないことで(それは村上春樹の「やれやれ」に縮小再生産されたのかもしれないけれど)妙に性に合っていた。
 そんなヴォネガットが死んだ。彼の、生前最後の本となったのは、「A MAN WITHOUT A COUNTRY」で、一昨年の九月にアメリカで発売となって、ベストセラーとなった。ニューヨークタイムズの追悼記事でも述べられているように、本書の最後に、「Requiem」というタイトルのヴォネガットの詩が添えられている。
When the last living thing
has died on account of us,
how poetical it would be
if Earth could say,
in a voice floating up
perhaps
from the floor
of the Grand Canyon,
“It is done.”
People did not like it here.
RIP
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