Mardi Grasともう一つの地図

 マルディグラとは謝肉祭の最終日、カトリック系の祝祭日で、世界各国で祝われる世界三大パレードのひとつとされているほどの大きなイベントらしい。でもシドニーでは少し事情が違う。2月の最終土曜日、シドニーでは世界最大と言われるゲイの祭典“マルディグラ”が毎年行われている。正式名称は『Sydney Gay + Lesbian Mardi Gras』。シドニーは世界有数のゲイ・フレンドリーな街なのだ。
 そんなことをキャスから聞いていたところに、とあるお誘いでゲイ・パーティに参加する。と言っても、正確にはただのホームパーティで、その参加者が全員ゲイ(というかレズ。向こうでは男女ともにゲイということが)というもの。総勢9名で僕以外全員女性、ストレートは僕とキャスだけという、なんとも不思議なパーティで、最初は思いっきり腰が引けていたのだけど、「無理だと思ったらいつでも抜け出そう」というキャスの説得で参加。キャスの同居人ダニエラ以外に僕はゲイの友人が(男女とも)いないし、やっぱり身構えてしまうところがある。もちろん人間としてはゲイかどうかなどまったく関係ないと思っているし、自分はその信条に則して行動できる人間だと思っているけれども、でも男であることを理由に(ダニエラ以外の)全員から敬遠されたり無視されたら、やっぱりちょっと凹むな、などと思ってから、そう思う自分の想像力の貧しさに凹んだり……。
 でもそんな思いはすべて杞憂。いたって和やかかつ楽しいパーティで皆フレンドリー。ダニエラの手作り料理に舌鼓を打ちながらワインを次々に空ける。途中、ゲイかバイかについて熱い討論が始まった時には、煙草を持ってベランダに退散したけれども、集まりの性格上ゲイであることに皆自負があるということ以外は、いたってノーマル。二つのことを考えさせられたパーティだった。
 一つは日本におけるレズ・コミュニティの存在。やはり日本では、特に女性のゲイについてはまったく可視化されていないと思う。ちょっとネットで調べれば、行き着けるのかもしれないけれども、少なくともマルディグラのようにコミュニティの存在を広く社会にアピールするようなものではない。それについては面白い話を聞いて、海外では、明らかにゲイの女性同士が肩組んだりして歩いていると、空き缶を投げられたり、ということもあるらしい(どこの国かは知らないが)。その代わりに、彼女たちのコミュニティは可視化されていて、例えばお約束のストリートがあったり(新宿2丁目のような)、マルディグラがあったりする。日本では、空き缶を投げられることはない。コミュニティは不可視だけど、個々のケースには寛容、というか無関心だ。一見、日本のほうが彼女たちにとって住みやすいようにも思うけれども、モノ足りないのかもしれない。無関心はすぐ差別に繋がるし、逆に闘いながら権利を主張するほうがアイデンティティは形成しやすい。そこら辺の感覚は、僕には想像でしか分からない。
 もう一つは、最近感じる東京の「もうひとつの地図」ともいえるもの。今回のパーティは日本人が4人、イギリス人、オーストラリア、ドイツ、イタリア、ブラジルという多国籍な参加者で、表参道から一本入った路地の、2ベッドルームの豪華なアパートの一室だった。そういう、日本人の感覚から言うと「金持ちしか住まない」ようなところに、在京外国人はしばしば滞在している(大企業の東京ブランチ勤めはたいがいそうだ)。六本木とか、西麻布とか、普段あまり行かない(六本木は嫌いだけど)街や、その他の街でも日本人とは住み分けて、外国人のコミュニティが存在し、彼らの馴染みの店があったりする。彼らの頭の中にある東京の地図は、僕たち東京に住む日本人の頭の中にある地図と、明らかに違う、と最近特に思う。今回のようななインターナショナルなコミュニティが、メトロポリタン東京には確実に広く存在するし、でも僕らの地図上には存在していない。「もうひとつの地図」が幾層にも重なって、都市というのは形成されているということに改めて思いを馳せる。
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