『ポスト・ヒューマン誕生』


ポスト・ヒューマン誕生 〜コンピュータが人間の知性を超えるとき

レイ・カーツワイル:著 井上 健:監訳 小野木明恵・野中香方子・福田 実:共訳

 アメリカの愛すべき偉大なマッド・サイエンティスト、レイ・カーツワイルによる最新の未来予測。2045年には、1台のコンピュータが全人類の知性を超える能力を持ち(もちろん人間の脳の能力もすべてリバースエンジニアリング済み)、ナノボット(ナノサイズのロボット)を体内に取り込んだ人間は、ついに永遠の生命(つまり永遠に維持できる身体、あるいは身体を必要としない「人間」)を手に入れる、というぶっとんだ一冊だ。遺伝子工学、ナノテクノロジー、ロボット工学の最先端の研究成果とその展望をふんだんに取り込んだ本書は、最先端の科学書としても読み応え十分で、全てが完璧に理解できなくても、編集をしていてとても楽しかった。その未来観の根底にあるものは、「収穫加速の法則」、つまりは「進化は加速する」という単純でいてなかなか真の意味で理解しにくい、体感しにくい原則だ。
 人は将来の見通しを、過去の延長として考える。つまり過去10年の進化のスピードを、そのまま今後10年の進化のスピードに当てはめるのだ。でも、進化は加速している。ムーアの法則を思い浮かべれば分かりやすいと思うが、産業革命以来、交通手段の進化、通信手段の進化、コンピュータの進化、どれもそれは一瞬で加速していく。僕が子どもだったころ、インターネットなどというものを、いったい誰が想像しただろうか。でも、それは確かにあったのだ。DARPAによって始まったいわゆるインターネットは静かに進化を続け、少しずつノードを増やし、そして臨界点を迎えた90年代に、爆発的に世界に広まったのだ。これこそ「進化の加速」の身近な例だ。右肩上がりの進化のカーブのちょうど中腹、そこから先は、進化の曲線がほぼ垂直に推移するその臨界点をカーツワイルは特異点(Singularity)と呼び、原書のタイトルを「The Singularity is Near」(特異点は近い)としているのだ。
 本書は、昨年亡くなったzoeさんにリーディングをしてもらった。難病と闘っていた彼は、「読むと、まだまだ生きて2045年の社会を見てみたいと思わせる」という感想をそのリーディングに付けてくれて、突き抜けた本であることは分かるものの大著で難解な部分もあるこの本を日本語で出す大きな理由となった。この一冊はzoeさんに贈りたい。

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