The Shia Revival

 『The Shia Revival : How Conflicts Within Islam Will Shape the Future』は今年8月にアメリカW.W.Norton & Companyから刊行された。一時はPublishers Weeklyでも30位台まで上がってきたが、今はamazonのランキングも落ち着いている。もしかしたら「核危機」のお株を北朝鮮に奪われてしまった格好だろうか。
 ここ数年、海外のブックフェアでもイランものの企画は目立っていた。イラク復興におけるシーア派の台頭(解放)、そして核開発を唱えるシーア派最大国家イランの脅威によって、シーア派の正しい理解は必須であり、単なる「原理主義」で片付けてはミスリードだという前提があるのだろう。加えてこの夏のレバノン紛争の一方の主役ヒズボラもまた、シーア派組織である。本書はシーア派をその誕生から歴史的に解説しながらも、サブタイトルにもあるように、現在の中東情勢を欧米vs中東諸国というよりも、中東国家内での宗派闘争に重点を置いて解説しているところが面白い。
 そもそもアラブ諸国では異端視されスンニ派のもとに抑圧されていたシーア派がこうして台頭してきた背景にフセイン政権の崩壊があることは間違いない。ただしイランを中心にシーア派が一枚岩かと言えばそうではない。本書によれば、イランの戦略は1980年代と同じ、宗派闘争には触れず反米と反イスラエルを訴えることで中東でのプレゼンスを確保しようというやり方で、核保有やホロコーストへの発言などでも明らかだ。最近はヒズボラもイスラエルに戦を仕掛けて男を上げている。それに対してスンニ派のサウジやヨルダンは宗派問題を取り上げることでスンニ派の団結を訴え、イランを牽制する戦略をとっている。
 しかし同じシーア派の一大勢力は、イラクのシスターニ氏が牽引する穏健派で、民主主義や代議制の実現を目指し、宗派闘争の止揚を目指している。ヒズボラの精神的支柱であるファドラー師も同じ路線だ。シスターニ氏はイランの政治的な影響力を排除しようとしていると言われる。果たして宗派戦争を仕掛けているのはシーア派なのか、スンニ派なのか? あるいはそもそも宗派の問題なのか、地政学の問題なのか? そのことを改めて考えさせるきっかけとなる本である。

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