あるミュージシャン/翻訳家の死

 zoeさんこと山田貴久さんが亡くなった。HAL FROM APOLLO ’69をはじめ様々な形で何枚ものCDを遺し、そして翻訳家として数冊の本を遺して、3年半の闘病生活の末、短かすぎる人生を駆け抜けていった。
 僕は、山田さんと面識がない。でも、マリオさんに紹介してもらった1年半前から一緒に仕事をしてきた。お互い翻訳業界ではキャリアの浅い駆け出しだったが、エージェントから紹介されたり僕が見つけてきた原書の検討用リーディングを、山田さんには何冊もお願いさせていただいた。それらはまだ一冊も本の形になっていないけれども、海外の本を日本に紹介する/しないという意味で、それは見えない形で確実にこの世界に痕跡を遺している。だから、僕は山田さんに読んでいただいた本を列挙することでその死を悼み、手向けとしたい。
Ripped and torn / Amaranta Wright
Terror inc / Loretta Napoleoni
A MAN WITHOUT A COUNTRY / Kurt Vonnegut
If Minds Had Toes / Lucy Eyre
Dynasties / David Landes
Timothy Realy: A Biography / Robert Greenfield
Almost Human / Lee Gutkind(未完)
 サブカルやアメリカ文学をはじめ、こうした書物を通していろいろとメールで話したのが懐かしく思える。特に思い出深いのがレイ・カーツワイルの「The Singularity is Near」だ。遺伝子工学、ナノテクノロジー、ロボット工学の指数関数的成長により、人間は不死の体を手に入れるというこの600ページ超の壮大な未来予測本に対して、山田さんは「驚愕の未来像であり、生きる気力も湧いてくる楽観的な書物です。2020年代まで生き延びて、この本の世界がどこまで実現するのか、体験してみたいと思ってしまいます。……少なくともすべてを理解していない僕でも、読み終わって、まだまだ長生きするぞと思ったので、この本の持つ、潜在的な力は相当だと思います」というコメントを付けてリーディングを送ってくれた。ぜひ一緒に、その未来を確かめてみたかったのに。
「今年は一冊、一緒に翻訳の仕事をしましょう。その打合せで初めてお互い顔を合わせるのが楽しみです」といっていたのに、それが果たせなかったことが悔やまれてならない。享年35歳。最期の言葉は「よし、行くわ」だったという。RIP
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