Monument Valley > GO WEST! : 5th day

 朝7時に目が覚める。たくさん夢を見て寝た気がしない。快晴で、モーテルのフロントでコーヒーを飲みながらメールなどをチェック。近くのガススタンドでホットドッグを買って朝食にする。このTuba Cityを含むアリゾナ州の北東部一帯は広大なナバホ自治区で、砂漠というか荒野の中に、日本の感覚で言うと仮設住宅のような住居が点在している。なんと過酷なエリアに閉じこめられたものか、と正直思う。しかしそのエリアはまた国立公園となるような景観(つまり厳しく奇特な自然)が多く、こうした観光資源は彼らの貴重な収入源なのかもしれない。ここら辺をこれから走るために、ナバホ&ホピネーションというくくりのロードマップを買う。
 昨日、グランドキャニオンを東に抜けたあたりから、こうした先住民の屋台ショップが街道沿いに時々見られたが、今日も走っているうちにいくつか遭遇する。やはり観光地近くに多いようだ。今日は旅のメインイベントとも言えるモニュメントバレーへ向かう。Tuba Cityから160号を東に、Kayentaで163号に乗って北へ向かうと、徐々に奇岩というか奇景が遠くに見えてくる。ちょうど写真を撮りたくなるような場所に、そうした先住民屋台が建っている。立ち寄ってネックレスを購入。そこでハーレーで旅をしている日本人に声をかけられる。バイクを停めたのが、ちょうど傾斜のあるところで一人では起こせないので手伝って欲しいという。よくあることだ。聞くと58歳で中型免許しかもっていないのだけど、今回僕の入った前日にロサンゼルスでハーレーを借りて一人旅をしているという。僕もバイク旅も考えたけれど怖じ気づいてやめた。なぜなら普段は大型スクーターしか乗っていないから、と言うと、「もしかしてマジェスティ? 僕も」といって握手される。妙な連帯感。「でもそのお歳になってもハーレー一人旅してるなんて、なんか勇気づけられました。僕も将来まだそういう旅ができるのかな、と思って」と素直に言ったら喜んでいた。写真を撮り合い、名刺を渡してお互いに写真をメールすることにして別れる。旅の合間の貴重な出会い。無事ゴールのロスに着いてもらいたいものだ。
 モニュメントバレーはすごいの一言だった。荒野から屹立するいくつもの岩のような地層。車で近づきながら、ゾクゾクしてくる。思えば昨日グランドキャニオンがいまひとつだったのは、緑の林を進んでいくと、突然「はい、どうぞ」という感じでグランドキャニオンが現れることと、そこは止まって見るだけだということがある気がする。だから大自然の中を車で駆け抜け、徐々に目前に迫ってくるその雄大な景色と対峙し、一体となるような感覚を抱けないのだ。赤土の荒野にそびえるモニュメントバレーはとても美しかった。そのまま163号を少し北上して丘を登っていく。ふと振り返ると、そこには完璧な風景が広がっていた。青い雲、白い空、赤い土、そして、赤黒いモニュメントバレー。僕は車を停めて、しばし眺めていた。ふいに、「これがアメリカかぁ」という言葉が口をつき、その瞬間、腹の底から思いっきり大声で「わーっ」と叫んでみた。こんなに大きな声を出したのは生まれて初めてかもしれない。届くはずがない、でも心の中のものをすべて吐き出してしまいたかった。二度叫ぶと、何か溜まっていたものがすべて解き放たれたようで気持ちが軽くなった気がした。その風景を眺めながら煙草を一服する。喉が痛くなっていた。
 モニュメントバレーからどこに向かうか、決めていなかった。でも、東へ東へと進んできた今までのこの旅は、ここでゴールでいいような気がした。このモニュメントバレーを見て、その後何を求めていけばいいのかも、少しわからなくなっていた。本当はさらに東のアルバカーキまで行ってみたいと思っていたけれども、今回の日程ではとても無理なことは分かっていた。ここにたどり着くまでに、今日は5日目になっていて、明明後日にはサンフランシスコに戻らなければいけない。友人のYoと待ち合わせているのだ。今日さらに東にいってしまったら。恐らく戻ってこられないかもしれない。
 いったん南に下って、ルート66の続きをたとえばギャラップからフラッグスタッフまで走るというのも良い案に思えた。ルート66沿いに、西に戻り始めるのだ。でも、と考え直す。ルート66を楽しみ、その後で自然の完膚無きまでの姿を見せられた後で、もう一度ルート66に戻る気にどうしてもなれなかった。僕はアメリカの自然に圧倒されていたのだと思う。自分はこれから何をしたいのか、メキシカンハットの町でタコスの昼食を食べながら、僕は自分の心に問いかけていた。
 自然とか、歴史とか、そういうことを抜きにしても、今僕が求めているのは水だった。これだけ荒涼とした大地をしかもこの気候のなかで駆け抜けていると、やはりいつか水にたどり着きたくなるのだ。太平洋を目指して西へ西へと向かった開拓時代のアメリカ人の気持ちが、今や痛いほど分かっていた。僕も海を目指すことにしよう、そして西海岸についたら、そこのビーチでゆっくり寝転がってのんびりしてやる。そう思うと、とても魅力的な旅がまた始まったようだった。ひたすら、西を目指す旅。海を目指して一路荒野を駆け抜ける旅。その先には青い海、白い空、金髪の美女(なんて)。悪くないではないか。
 191号を南に下り、また160号にのって一路西を目指す。途中でまたKayentaをつっきり、98号に乗り換えてPageを目指す。途中ガソリンを入れたKaibitoという小さな町も典型的な先住民居住区だった。Pageはパウエル湖畔にあって、美しい水をたたえるパウエル湖には非常に惹かれたのだが、湖にたどり着くのに15ドルといわれてバカらしくてパスする。自然なんて、お金を払わなくてもいくらだって目の前に転がっているのだ。そこから89号に乗ってユタ州へと入り、Kanabuを抜けたあとで今度は9号に入る。この道はザイオン国立公園を突っ切っている。このザイオンは、ちょうどグランドキャニオンを下から眺めるような景観で、グランドキャニオンとヨセミテを足して二で割ったようなというか、針葉樹林の生えたグランドキャニオンというか、そんな感じの素敵なところだった。でもなぜかディズニーランドのようだな、とも思う。
 これだけ旅を続けていると、良くも悪くも絶景慣れしてしまうのだ。次から次へと姿形を変えるこの自然に、だんだんとこちらも順応するようになっていく。もうちょっとやそっとのことでは、「そんなのもあるよね」という感じになってしまう。例えば(こだわるようだが)グランドキャニオンは、ラスベガスに来て飛行機やバスツアーでポンと来れば、確かに感動的なのかもしれない。でもそうした景観というのは公園の中だけではない。ザイオンもしかり。結局、国立公園というのは、その中でももっとも美味しく凝縮されたところをそうしているだけなのだ。だから、旅の最初にも思ったのだが、国立公園というなら全てが国立公園のように思えるし、公園として一部だけを切り取って、そこを楽しむという感覚にどうしても今回はなれなかった。
 ザイオンを抜けてインターステート15号に出た辺りにあるセント・ジョージで力尽きる。時間は19時過ぎ。経度だけで言えば、今日の午後は、おとといから今日の午前中まで2日半のあいだ東に走った分を、一気に西に戻ってきた感じだ。さすがに今日は走りすぎの感がある。本当はこのあとラス・ベガスを抜ける予定なので、どうせ通過するなら夜景が見られる今日の夜がいいのではないか、とも一瞬考えたけれど、ラス・ベガスに泊まる気はないし(モーテルすら高そうだ、と思ったのだが、あとで聞いたらラスベガスのホテルは安いことで有名らしい)、それを越えて次の町で宿を探すとなると22時をまわってしまいそうなので断念。セント・ジョージはラス・ベガスの少し手前(といっても2時間か)ということ以外に何も取り柄がない町で、ガススタンドで見つけたクーポン帳で探したモーテルは36ドルという最安値記録を更新。しかも部屋はとてつもなく広い二部屋でキッチンつきのすごいところだった。モーテル文化、恐るべし。
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