熱海考

 いま、熱海と聞いていいイメージを抱く人はどれだけいるだろうか。神奈川県に隣接する東京至近の立地。新婚旅行や社員旅行の定番として栄えたのも今は昔。日本人のヴァカンス意識の成熟化とともに衰退の一途を辿る斜陽温泉地とも言われる。で、実際はどうなのかと行ってみることに。熱海に実家がある同期のTと一緒だ。
 お昼に着くと、駅近くのTの実家に荷物を置いてお昼ご飯へ。駅から続くアーケード街には土産屋が並び、活況を呈している。主におばさま軍団のようだが、これだけ人がいるのは意外だ。新幹線利用者が主だという。新旧のお店が混在していて、写真はその商店街にあった、旧パチンコ屋だ。台が古すぎてこの6月の法改正で営業ができなくなったのだと言う(だから客が誰も座っていない)。お店の脇にあるスマートボールだけでおばあちゃんが細々と営業を続けている。お昼は干物屋の店の奥の座敷で干物定食。サバ、アジ、アジ味醂干しとボリュームたっぷりで満腹に。熱海の干物は、本当にうまい。
 それからは温泉三昧だ。リゾートホテル(風)のKKRホテル熱海の温泉は熱海湾を一望できる桜御影石の露天風呂がお薦めだ。もっとしなびた地元っぽいお風呂をご所望なら海岸近くの渚共同浴場がいいだろう。広さは家庭のお風呂よりもかろうじて広く、湯船は二人も入ればいっぱいだ。絶対に地元の人しか来ない、不思議な社交場になっている。ちなみに熱海のお湯は軒並み熱い。源泉は90℃ともいい、古来「阿多美」とか「直見」とされてきた地名は、海底から熱いお湯が出ることで「熱海」になった、という説もある、らしい。歴史的にも大変古く、5世紀には文献に残っている。徳川家康を筆頭に歴代のセレブが愛した熱海。それに隠された海底遺跡という歴史ミステリーまである。うーん、なかなか奥深いぞ、熱海。
 世界的美術品も鑑賞できる。MOA美術館では尾形光琳の国宝「紅白梅図屏風」や重要文化財のオンパレードで、モネやルノワールだって観られる。だが何よりも圧巻なのはその美術館の延々と続くエスカレーターで、優に一山分は登っている。ほとんど「未知との遭遇」体験だ。ちなみにてっきりMOMAのぱくりだと思っていたその名前は、Mokichi Okada Associationの略で世界救世教の教祖・岡田茂吉氏から来ている。隣接するパルテノン神殿のような聖殿も要チェックだ!
 夜は地元の魚屋直営のレストランで魚三昧。熱海といえば、やっぱり「アジのたたき」なのです。ホントに魚好きにはたまらないぞ、熱海。おまけに酔い覚ましには熱海銀座近くの「ゆしま遊技場」でスマートボールと射的で遊べる。1回500円で12点獲得した僕らがもらえたものは、神戸のオキモノ土産(なんで?)。ともかくエキサイティングな夜は約束されている。熱海サンビーチ沿いの「お宮の松」(金色夜叉の)を観賞したあと月の栖熱海聚楽ホテルの温泉につかり、とどめのラーメンとビールで熱海を締めくくる。
 熱海の街は坂や細い路地が多く実はとても情緒がある。ご飯も美味くお湯は気持ちのいい熱海のポテンシャルはなかなかのものだ。街全体の寂れた感からうまく美味しいところだけを抽出して楽しめれば一泊ぐらいあっという間だろう。村上春樹・都築響一・吉本由美の『東京するめクラブ 地球のはぐれ方』は紀行文の良著で、そこの熱海紀行では秘宝館風雲文庫といったさらなる奥深い熱海の一面を紹介している……。僕が本当にそこに行きたいのかどうかは覚束ないが、まだまだ熱海探訪は続きそうだ。。
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