ニューヨーク 5th days

 ホテル並みのゴージャスな朝食と、美味しい稲庭うどんの昼食を食べて叔父の家を後にする。いったんペン・ステーションまで戻り、そこからNew Jersey Transit鉄道に乗り継いで、一路ニュージャージー州プリンストンへ向かう。乗り継ぎも含めると4時間の鉄道旅。車中で今回の旅の前から読み始めていたジョン・アーヴィングの『ホテル・ニューハンプシャー』を読了する。『ガープの世界』以上の傑作だった。数奇な家族の物語で、幾多の悲劇(ショック死、事故死、レイプ、失明、病気、自殺)に彩られながらも、そこには圧倒的にポジティブな姿勢に裏打ちされた様々な愛の形が登場してくる。もはやアメリカ文学の古典ながら、そこに描かれる深い人間洞察と「愛する者への眼差し」には心が震えた。世の中にはいろいろな愛の形がある。それでいいのだ。たぶん。車窓を過ぎるマンハッタン郊外の風景を眺めながら、深く物思いに沈む。
 今回はプリンストンにお住まいの冷泉彰彦さんのお宅にお邪魔させてもらうことになっていて、夕方17時頃にPrinceton Junction駅まで迎えに来ていただき、そこからプリンストンの自然と調和した由緒正しい大学町の街並みと、「壮大な廃墟」とも言うべき州都トレントンの姿を対比しながら、初めてマンハッタンとロングアイランド以外の、アメリカの「日常」を体験する。奥様の美味しい手料理に舌鼓を打ち、21時過ぎの列車でマンハッタンに戻る。
 ホテルに戻ると、いくつかのメールの中に、「LOST PASSPORT & BRIEFCASE…」というタイトルが。そう、実は金曜日の夜に、ペン・ステーションに向かうタクシーの中にパスポート入りのブリーフケースを忘れてしまったのだ。すぐに気づいたけど後の祭り、折悪く週末に入ったために、日本領事館に行くにもタクシー会社に問い合わせるにも月曜日を待たなければならない。そして、普通に考えれば、二度ともう出てはこないだろう。というわけで、この週末は諦めて(不安な心持ちのまま)ゆっくり羽を伸ばすことにしたのだが……信じられない。ユニオンスクエア沿いのレジデンシャル・タワーのアテンダントが、ビルの前に置き去りにされた鞄を見つけて保管しているとメールで知らせてきたのだ。電話で住所を確かめすぐにタクシーで向かう。中を検めると、もしもの時にとK先輩からもらった餞別のキャッシュは無くなっているものの、パスポートもその他のものもすべて無事。Richard Pettway、Gilbert Ruiz、君たちは間違いなくヒーローだ(と自分たちで言っていた。「NYの街も捨てたもんじゃないだろ」と)。「お酒を何杯も飲み過ぎてはいけない」ということや、パスポートをお尻のポケットに入れるときは横向きに入れれば安全だ、という講釈を拝聴し、100ドルのお礼をキャッシュで払って、2日ぶりに無事、鞄が手元に戻ってくる。これが世に言う「ニューヨークの奇跡」である(I編集長命名)。
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