タマガワ アパートメント

 めずらしくぽっかり空いた日曜日。近所にある行列のできる蕎麦屋、利庵に初めて入れたのでかき揚げとせいろうに舌鼓を打ち、小雨がぱらつく午後を、目黒通りのインテリア・ショップ巡りにあてることにする。白金台に引っ越して以来、ずっと行きたかったのだ。目黒通りがインテリアショップの連なる名所となったのはいつからなのだろう? 目黒駅から自由通りあたりまで、断続的に林立するショップは、交通の便が必ずしもよくないこともあって、なかなか行く機会がなかったのだが、今日は徹底的に歩いてやろうと思ったのだ(スツールが欲しい。フロアランプも、良いのがあれば購入したいな、と新居に来て以来思っていたので)。
 そんな折、目黒駅から権野助坂を下る途中でふとギャラリーの看板に目がとまる。「タマガワ アパートメント」。ポスターには、河原から向こう側へと延びている古い橋を真正面のアングルから捉えた少しノスタルジックなモノクロの写真があり、その不思議なタイトルと写真に、自然と足が階段を上り始める。そこはギャラリーコスモスという名前の小粋で暖かみのある内装のギャラリーで、「タマガワ アパートメント」は写真家・木村直人さんの個展だった。多摩川の河川敷で、冬枯れした植物や、人のいない河原や、給水塔などのコンクリートの建物などが、モノクロで撮られている。それらは僕が小さい頃多摩川で遊んでいた時代の、つまり70年代の風景ではと思うほどノスタルジックで時代を感じさせながら、その被写体はどれも無人で造形に力強さが潜み、それらを真正面から捉えるカメラワークには、ノスタルジィとは決別した能動的な意志が感じられる気がした。過去とも現代とも判別のつかない、しかし確実にそれを現代において捉え直そうとするかのような、時間の流れを感じさせる不思議な写真と展示だった。木村さんから聞いたのだが、展示タイトルの「タマガワ アパートメント」は川沿いにある架空のホテル兼アパートメント(今で言うマンション)で、ひとつひとつの写真は、その各部屋に飾ることを意識して撮ったのだとか。そういったストーリー作りというのも、興味深い。
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