パズル・パレス〜NSA本部

 アメリカのNSA(国家安全保障局)の周辺がにわかに騒がしくなっている。去年12月16日、ニューヨークタイムズ紙が「NSAが令状なしで米国市民を盗聴している」とすっぱ抜いたのだ。折しも米上院は年内に期限切れを迎える愛国者法(反テロ法)の延長を審議中。共和、民主両党の一部が盗聴条項などで一段のプライバシーや人権保護策を求め、採決を拒否し、否決された。年明けから、米メディア各局でもこの「反盗聴キャンペーン」が張られている。
 そもそもNSAはアメリカのシギント機関として、一部ではあまりにも有名な存在だ。一般にはCIAやFBIは知っていても、それよりも大規模なNSAの存在を知る人は、日本でも、そして本国アメリカでもほとんどいない(いなかった、か)という。第二次世界大戦の米英連合から続くエシュロン・システムという地球規模の衛星通信傍受システムを擁し、全世界、そしてもちろんアメリカ国内をも盗聴していたであろうことは、容易にうかがい知れる。NSAの歴史については例えば以下のサイトに詳しい。
 ただこのエシュロンとNSAという組織、90年代後半に陰謀論を絡めてマスコミでも一時期採り上げられたが、それは主に「産業スパイ」的な側面からだった。そして、2001年9月11日。それ以降、あれだけ騒がれたエシュロンもNSAもマスコミからスッと姿を消した。日本でも三沢基地などいくつかの基地がこのエシュロンシステムに荷担している、というのに。
 対テロ戦争において、NSAほど重要な組織はない。いや、だからこそこのNSAはまた闇の中に舞い戻ったのだろう。もちろん、それに相反して、表向きはおおっぴらにホームページなどを掲げるようになった。この情報公開社会のなかでは、こうした諜報機関なども微妙なバランス感覚を求められるのだ。
 では21世紀にNSAは何をやっているのか、そんな問題意識を持っているときに、当時アメリカで若い大学院上がりの青年が書いた一冊、『Chatter: Dispatches From The Secret World Of Global Eavesdropping』に出会った。NSAの歴史からエシュロンの実態、イギリスの諜報員がすっぱ抜いた国連事務総長の盗聴事件や、911の前日に傍受した「チャター」まで、あらゆる「公開された」資料に基づいて最新のNSAに迫った労作だ。日本版は『チャター:全世界盗聴網が監視するテロと日常』として11月に刊行されている。その翌月に、こうしてアメリカでNSAが突如表舞台に立たされるという事実は感慨深い。
 今回、CNNで報道されたというNSA本部(通称「パズルの迷宮」)の写真を知り合いがメールで送ってくれた。もちろん、今までその公開はタブーとされてきたものだ。今のところこの反盗聴キャンペーンは政府対リベラルという対立構図を越えるものではないが、『チャター』の作者パトリック・ラーデン・キーフが言うように、これは「安全か、人権か」というもっと現代的な問いかけを内包している。
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