『空港にて』あるいは Vieux ChateauCertan

 友人Hの誕生日祝いにと、麻布のラ・シェットで Vieux Chateau Certan ’75を空ける。古くからポムロールを代表するグラン・クリュで、畑はペトリュスの隣という最高のロケーション、作り手はあのChateau Le Pinのティエンポン・ファミリー。ポムロールでは例外的にカベルネの割合が多いこの至高のワインのお味は、もう幸せの一言。久しぶりに、ワインの快楽に酔いしれた一晩だった。
 そんな折り、村上龍さんの『空港にて』を読む。これはもともと『どこにでもある場所とどこにもいない私』として単行本で刊行されたものの文庫化のもの。単行本で読んでおけばよかったと思うほど、村上さんの中では最高傑作といえる短編集のひとつではないだろうか。その中にはワインの記述も多かったのだが、特に心にのこったのが以下。この至高のワイン体験と妙に自分の中で強く共鳴せざるを得ない部分。
 「〜その男は海外の映画の製作にも関わっているらしくて、ワインに詳しかったし、良い保存状態の素晴らしいワインが置いてあるワインバーやレストランをよく知っていた。『ジュラシック・バーク3』という映画について話していたときに飲んだワインは、名前は忘れたが、非常に高価なものだった。香りをかいで、最初に口に含んだときに、あまりに官能的だったので体の奥が震えたのをよく覚えている。こんなワインは飲んだことがありません。私がそう言うと、それはそうだよ、とその男は笑った。ぼくはあなたの倍近く生きているし、それなりに収入もあるので、こういうワインを飲むし、一緒に飲む人を選ぶこともできる。でも、気をつけないといけないなと思うのは、こういうワインを飲むときに、これが人生で最上の瞬間だと思ってしまうことだ。このワインはボルドーのポメロールの中でももっとも貴重な一本で、他のワインと比べることはできないし、それだけじゃなくて、他のどんなものとも比べられない。音楽とも比較できないし、ぼくが最高の映画の一つだと信じているような映画とも比べられない。もちろんセックスやオルガスムとも比較できない。
 問題なのは、いや問題というか、興味深いのは、〜」
 本当はこの先がもっといいのですが、引用しすぎなので、気になる方は買って読んでみて下さい。。。
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